わき小児科医院

 

 

きりん通信

 

きりん通信 第4号 平成23年12月1日


ごあいさつ

 こう言っている人がいる。まだ周りをとりまく自然が厳しい時代は、生きていくために、人々は団結することが必要であった。村八部にされることは、まさしく生き死にに直結していた。いまや、文明も社会も発展し、社会にまったくつながっていなくても生きて行ける時代になった、と。では、現代に生きる私たちにとって、人と人との絆はどういう意味を持つだろうか。意味がなければ、人は社会の中でーつの歯車にすぎなくなり、周囲と接触を持たなくなる人ばかりになっていくだろう。3月11日の日に避難することを拒否する近所のお年寄りを説得し続け、結局津波に巻き込まれてなくなった人がいるという。今度の震災では改め人と人との結びつきを考えさせられた。昔、部屋のしきりも家の壁も薄く、兄弟・近所の話は筒抜けで、関係は濃厚であった。いまは、部屋の壁も家の境も厚いコンクリートとなり、町も巨大になった。関係の薄くなった大きな社会に住む我々は、自分の周りのかさな関係をもっと大切にしなくてはならない。

 

医学の豆知識

RSウイルス

今年はRSウイルスが流行していると新聞等に書いてありました。
でも聞きなれない名前なので、一体どんなウイルス?、と思われた方が多いのではないでしょうか。
RSウイルスはRespiratory Syncytial Virusの略で、日本語訳は、呼吸上皮合胞体ウイルスです。これはウイルスが感染した細胞の形を示した名称ですが、ますます何のことかわからなくなるので、そのままRSウイルスと呼んでいます。
  聞きなれない名前でも、RSウイルスは乳児の感染症ではポピュラーなウイルスです。
1歳までに半数以上が、2歳までにはほぼ100%がかかります。その後も一生感染を繰り返します。生後半年間は、母親からの移行抗体があり感染を受けにくいはずですが、RSウイルスは新生児期でも容易に感染が成立します。接触あるいは飛沫によりまず鼻粘膜に侵入し、4~5日の潜伏期ののち、鼻水・咳嗽が始まります。鼻水を吸い込むことで一部のこどもが気管支炎・肺炎・細気管支炎に進展します。とくに乳児期前半では細気管支炎が有名です。
気管支炎や肺炎では、高熱や咳嗽が持続しますが、細気管支炎は乳児のみにみられ、いきなり呼吸が浅く速くなり、ミルクも飲めず、ぐったりしてしまいます。
こうなると入院の上、酸素吸入が必要となり、中には人工呼吸器を使う人も出てまいります。とくに36週未満のお子さん、心臓や肺の悪いお子さん、免疫不全や染色体異常を抱えているお子さんなどは、重症化しやすく、命にかかわることもあります。
治療ですが、咳止め、去痰剤の投与、気管支拡張剤の吸入などが行われ、重症例では酸素吸入、人工呼吸器による治療が使われますが、ウイルスをやっつける治療法はなく、ワクチンもありません。唯一、RSウイルスに対する抗体を遺伝注射をしてあげると、感染を軽くできます。
しかし、これは大変高価で(1本子操作で大量に作って、1月に1回が16万円もします!)、上にあげた、とくに重症化しやすく命に関わる危険が高いお子さんだけが適応になります。
一方、年齢の大きなお子さんや大人の方も繰り返し罹りますが、この場合は、重症化することはあまりなく咳・鼻水が中心のいわゆる「風邪」で終始するようです。いずれにしても、小さなお子さん、とくに生後半年未満で咳や鼻水が始まって続くようであれば、早めにご相談いただくのがいいと思います。

 

薬局のコーナー

~おくすり講座~(粉薬の飲ませ方)

○指を使って
薬に水を数滴加えてペースト状にし、きれいに洗った指で、頬の裏側か上あごに塗って下さい。

○スポイトを使って
薬に少量の水を加えてシロップ状にし、スポイトに吸い取って、ロの脇から頬の内側に流し込みます。

○哺乳瓶の乳首を使って
薬に少量の水を加えてシロップ状にし、なるべく普段使っていない哺乳瓶の乳首をくわえさせ、薬を注いで吸わせます。

※注意点
○薬と混ぜて飲みやすくなる物や、控えた方がよい物もあります。医師や薬剤師にご相談下さい。
○食後だとお腹がいっぱいで飲んでくれないことも有ります。服用のタイミングについては医師にご相談下さい。

康仁薬局廿日市中央店
管理薬剤師 川邊 腎伺

 

スタッフの一押し

古江の「もみじ庵」
のれんに書いてある通り、いちご大福がオススメです。

 

いま話題のポリオ・ワクチンについて


Q1.ポリオという病気は聞いたことはあるけど、どんな病気?
ポリオ・ウイルスによる感染症です。3~6日の潜伏期のあと発熱が生じ、2~3日で熱が下がった途端に足に力が入らなくなり、数日で完全に麻痺してしまいます。ただし、感染しても90%以上は無症状で経過し、実際に麻痺を生じる人は1%以下と言われています。
 

Q2.そんなに発症する人が少ないなら、注意はいらないのでは?

発症率は低いのですが、発症した場合治療法がなく、生じた麻痺も回復しません。実は、1950年代の終わりに日本ではポリオが大流行し、1960年は患者数が5千人を超えました。びっくりした政府は大慌てで当時のソビエト連邦とカナダからポリオ生ワクチンを緊急輸入して、全国の子どもたちに一斉に飲ませました。効果は絶大で、2~3年で患者数は10人程度に減少し、1980年の1人を最後に野生型ポリオの発症はありません。今続くポリオ生ワクチンのこれが始まりです。
 
Q3.患者がいないのなら、ワクチン不必要?
確かに日本では患者は出ていませんが、世界に目を向けると、アフリカ、東南アジアの国ではいまだに発生しています。世の中はグローバル化していますので、いつ持ち込まれても不思議ではありません。ですから、ワクチンは必要です。しかし生ワクチンには一つ重大な問題があります。実はワクチン株のウイルスでポリオが発症して麻痺を起こすことがあるのです。ただし、その頻度は、わが国では450~550万人に1人という頻度ですから、稀です。これをワクチン関連麻痺といいます。生ワクチンに変わる方法として、不活化ワクチンがあります。このワクチンでは、予防効果は生ワクチンより劣りますが、麻痺は発生しません。そこで、今後は生ワクチンを止めて不活化ワクチンを導入する予定になっています。
 
Q4.来年には不活化ワクチンが導入されそうだと、うわさで聞きました。
  では危険な生ワクチンはもう飲まないほうがいいのではないですか?
先ほど申しましたように、ワクチン関連麻痺は極めて稀ですから、それほど危険というわけではありません。一方、10月に厚生労働省は、不活化ワクチンは早くて平成24年度の終わり頃になる見通し、と発表しました。これは導入は1年以上先になるかもしれないという意味でしょう。
もうひとつ、注意しなければならないことは、2000~2001年にドミニカとハイチでポリオが流行しましたが、これは毒性を復帰した生ワクチン株によるものでした。ワクチンを飲んだ子どもさんからは、便にワクチン株ウイルスが数ヶ月も出続けますが、人の体を通ってくると、ウイルス株は変異を起こすことがあります。この変異ウイルスが、ワクチンを受けていない子どもに感染したのです。ワクチン未接種者が増えたために起こった現象です。ですから、生ワクチンを飲まない子供が増えてくると、かえって危険な状態になる可能性があります。これを防ぐためにも、生ワクチン接種が続いている間はきちんと飲んでいただくことが重要です。